プピーユといえば、知る人ぞ知る“プチ・シャトー”としてワイン愛好家の間で親しまれている一本です。
私自身も一度味わったことがありますが、これまでヴィンテージ(当たり年)には注目していなかったため、今回あらためて調べてみることにしました。
この記事ではプピーユの魅力や評価の高いヴィンテージ、そして話題になった背景などをわかりやすくご紹介していきます。
さらに今どこで手に入るのか、価格の目安もあわせてチェックしていきましょう。
同じく『神の雫』で取り上げられた「シャトーモンペラ」や「カサーレヴェッキオ」も、当たり年によって評価が大きく変わることで知られています。
気になる方はこちらの記事もぜひご覧ください。


プピーユの当たり年は?高評価ヴィンテージ一覧

プピーユのようにヴィンテージによって味わいや評価が大きく変わるワインは、選ぶ年次第で満足度も大きく左右されます。
ワイン好きなら是非とも押さえておきたいポイント。
結論から言えば、評価の高い当たり年トップ3は「2016年・2012年・2017年」です。
普段ならVivino(ヴィヴィーノ)というワイン愛好家メディアを参考にするのですが、なぜかプピーユの掲載がありませんでした。
そのため今回は、よりコアな愛好家が集まり、熟成ワインの評価に定評のある「CellarTracker(セラートラッカー)」のデータを参考にしています。
年代 | 評価 |
---|---|
2020 | ー |
2019 | ー |
2018 | ー |
2017 | 約88.5 |
2016 | 約91.0 |
2015 | 約88.0 |
2014 | 約88.0 |
2013 | 約87.0 |
2012 | 約89.5 |
2011 | 約86.0 |
2010 | 約89.5 |
2009 | 約87.5 |
2008 | ー |
2007 | ー |
2006 | 約84.0 |
2005 | 約84.0 |
2010年も高評価なのですが、熟成という観点から今回は2012年に集約しました。
年数が経過したワインほど流通量が限られるため、入手が難しくなるのは避けられない現実です。
プピーユの取扱いと相場
プピーユは小規模生産のワインのため大量流通が難しく、取扱いも正規代理店や特定のインポーター経由です。
そのため一般的なスーパーやディスカウントストアにはほとんど並びません。
実店舗のリカーショップであっても当たり年を見つけるのは困難です。
確実に手に入れたい場合は、オンラインストアでの入手がベストでしょう。
プピーユの全体的な相場は、およそ5,000円~6,000円といったところ。
ただし、流通量の少なさやヴィンテージごとの希少性が価格に影響するため、人気の年には一時的に相場が上昇することも珍しくありません。
そのため、この価格帯の中で評価の高い年を見つけられれば、かなりコスパは良いと感じます。
プピーユ 2016|最も評価が高いヴィンテージ

2016年のプピーユはまさに「文句なしの当たり年」。
この年のボルドー右岸は天候に恵まれ、ブドウの成熟度も抜群でした。
熟成ピークは2023年〜2030年頃と言われており今まさに飲み頃を迎えているヴィンテージでもあります。
やはり人気ヴィンテージなのか、現在はAmazonで7点の取扱いしかありません。
プピーユ 2012|熟成で真価を発揮

プピーユの2012年ヴィンテージは、まさに今が飲み頃の終盤に差し掛かっており、熟成によって深まった味わいをじっくり堪能できるタイミングです。
ただし10年以上を経た高評価ヴィンテージということもあり、市場での流通量は限られて希少性も高くなっています。
確実に手に入れたい方は早めに入手の検討をおすすめします。
プピーユ 2017|入手しやすくバランス重視


プピーユの2017年ヴィンテージは、2016年に比べると少し控えめな評価ながらも「バランスの良さ」「飲みやすさ」で人気の高い1本です。
ハーフサイズが多く流通しており、比較的リーズナブルな価格帯で手に入ります。
「プピーユを飲んでみたい」という初心者にとって、ハードルの低いエントリーヴィンテージといえるでしょう。
プピーユとシャトー・プピーユの違い

既にご存じの方もいると思いますが、「プピーユ」と検索すると「シャトー・プピーユ」という名前のワインも多く見つかります。
名前が似ているため非常に分かりにくく、私自身も最初は混乱しました。
こちらでは2つのワインの違いをわかりやすく整理、シャトー・プピーユはどんなワインなのかお伝えします。
シャトー・プピーユはセカンドワイン
まず、最も大きな違いは「プピーユ」が造り手のフラグシップ(代表作)に対し、「シャトー・プピーユ」はセカンドワインにあたる点です。
ワインの世界では、収穫されたぶどうの中から厳選された最良のものだけを使用して造られるワインを「ファーストラベル」と呼びます。
一方で同じ畑や近隣のぶどうでも、より親しみやすさやコストパフォーマンスを重視して造られるものが「セカンドラベル(セカンドワイン)」です。
つまりシャトー・プピーユはプピーユに比べてカジュアルに楽しめる仕上がりになっています。
もちろん品質が悪いわけではなく、日常使いしやすいバランスと価格帯を意識して設計された、満足度の高い1本です。
参考資料:シャトープピーユ公式
熟成期間や醸造方法が異なる
もう少し踏み込んで違いを見てみましょう。
実は「プピーユ」と「シャトー・プピーユ」は、熟成期間や使用する樽の種類にも違いがあります。
Poupille(プピーユ) | Château Poupille(シャトー・プピーユ) |
---|---|
≪品種≫メルロー100% | |
≪熟成方法≫ 発酵:自然酵母 熟成:オーク樽(28ヶ月間/新樽比率50%)+ステンレスタンク | ≪熟成方法≫ 発酵:自然酵母 熟成:15%をフレンチオーク樽(18ヶ月間) 85%をステンレスタンクとコンクリートタンク(36ヶ月間) |
≪度数≫14.5% | ≪度数≫13.5% |
「プピーユ」は新樽の比率が高く、長めに熟成させてから出荷されるため、時間とともに変化する“エレガントな味わい”になります。
対する「シャトー・プピーユ」は熟成期間が比較的短く、タンニンもやわらかめ。
リリース後すぐに飲んでも楽しめるように設計されており、開けたてでもバランスの良い飲みやすさがあります。
ワイン初心者の方でも構えることなく楽しめる一方で、しっかりとしたボルドーらしさも味わえる、満足度の高い一本となっています。
シャトー・プピーユの当たり年
「シャトー・プピーユ」にも、注目すべき当たり年があります。
こちらは簡潔にまとめますが、以下のヴィンテージは特に評価が高いとされる一品です。
出典:Vivino
2015年~2018年は比較的ボルドーの気候に恵まれたこともあり、価格と品質のバランスが取れている“狙い目のヴィンテージ”と言えるでしょう。
また、フラグシップであるプピーユも2016年や2017年が高評価を得ており、全体的にこの時期の出来が良かったことがうかがえます。
シャトー・プピーユの相場は3,000円台と比較的リーズナブル。
プピーユの風味を手軽に体験したい方にはうってつけです。
シャトー・プピーユ 2017 ハーフボトル

シャトー・プピーユ 2018

シャトー・プピーユ 2015 ※在庫なし
現時点では大手ECサイトでの取扱いがありませんでした。
確認ができましたら随時更新していきます。
プピーユの種類と味わいを深掘り!上級キュヴェと造り手の哲学

プピーユには、定番ラベルだけでなく、いくつかのバリエーションが存在します。
また、造り手の思いや背景を知ることで、ワインを味わうひとときがより豊かで深いものになるはずです。
この章ではプピーユの種類と味の傾向、楽しみ方をまとめてご紹介します。
プピーユ・アティピックは上級・特別キュヴェ

「アティピック(Atypique)」は、プピーユの中でもひときわ特別なキュヴェとして位置づけられています。
使用されるのは、樹齢100年以上を誇るメルローの古木から収穫されたぶどう。
さらに、酸化防止剤である亜硫酸塩(SO₂)を一切使用せずに醸造されており、ナチュラルな製法へのこだわりが際立ちます。
そのため、フレッシュでみずみずしい印象を持ちながらも、芯のある力強さと複雑さを兼ね備えた味わいが魅力です。
ワイン名の「Atypique」はフランス語で“型にはまらない”を意味し、その名の通り、このワインならではの個性を物語っています。
なお、生産されるのは特に条件の良い年に限られており、数量もごくわずか。
こうした希少性から価格帯は13,000〜20,000円前後とやや幅があり、近年では相場も上昇傾向にあります。
熱心なワイン愛好家たちの間でも高く評価されている一本です。
より上位価格帯で注目される赤ワインとしては、「オーパスワン」も人気。
こちらも当たり年や価格の違いを把握しておくと、選び方の幅が広がります。

プピーユの意味と右岸ガレージワインとしての個性
「プピーユ(Poupille)」という名前は、フランス語で「丘の端」を意味します。
このワインは、ボルドー地方右岸のコート・ド・カスティヨン地区にある「シャトー・プピーユ」で生産されているもの。
プピーユは「ガレージワイン」としても知られています。
これは、大規模な設備を持たない小規模生産者が、手間を惜しまず丁寧に造る高品質なワインのことを指します。
かつては注目度の低かった産地ですが、オーナーであるフィリップ・カリーユ氏の情熱と努力により、その名声は一変。
いまでは高品質なワインの産地として世界から注目されるようになりました。
また、フィリップ氏は環境保全にも強いこだわりを持っており、2008年には有機栽培の認証を取得。
“自然な畑を未来の世代に残したい”という哲学のもとに行われるブドウ栽培は、プピーユの味わいにも確かな個性を与えています。
適正温度とおすすめのグラス
プピーユを楽しむための適正温度は、16〜18℃が理想とされています。
常温でも味わえますが、夏場は少し冷やすと引き締まった印象に。
冷やしすぎるとタンニンが強く出てしまい、果実の甘みや香りが閉じてしまうため注意が必要です。
一方、寒い季節には開栓後30分ほど室内に置くことで、ちょうどよい温度に整います。
グラスは、大ぶりのボルドータイプがおすすめ。
ワインが空気にしっかり触れることで、プピーユ特有の果実香やスパイスのニュアンスが際立ち、豊かな味わいが引き出されるでしょう。
相性の良い料理
プピーユはメルロー100%で造られるフルボディタイプの赤ワイン。
しっかりとした味わいなので、お肉料理との相性が抜群です。
その特長は、熟した果実の風味とやわらかなタンニン、そしてなめらかな舌触り。
こうしたバランスの良いワインは料理との相性も非常に幅広く、食卓に上る多くのメニューと心地よくマリアージュしてくれます。
これらの料理はプピーユの持つ豊かな果実味とコク、穏やかな酸味と調和して互いの旨味を引き立て合います。
特にグリルやローストなど、香ばしさが加わる調理法との相性は抜群。
また、熟成を経たプピーユであればより繊細なニュアンスが現れるため、鴨のローストや鹿肉の煮込みなど、ジビエ料理にもよく寄り添います。
意外とチーズとの相性も良く、カマンベールやコンテなどクリーミーかつコクのあるタイプと合わせると、より一層プピーユの甘みと旨味が引き立つでしょう。
神の雫でプピーユが注目された理由

プピーユが注目を集めるきっかけの一つとなったのが、ワイン漫画『神の雫』です。
作中ではプピーユが印象的なシーンとともに登場し、その存在感が多くの読者の記憶に深く残りました。
この章では物語に登場した際の情景や、その後「プチ・シャトー」ブームをけん引する存在となった背景について、詳しく紐解いていきます。
『神の雫』で登場したプピーユの描写と評価
『神の雫』においては第9巻で「プピーユ・1999」が登場します。
作中で主人公・神咲雫は、ワインの世界に足を踏み入れるきっかけをくれた営業部の先輩・長崎の訃報を知らされます。
彼のロッカーに残されていた一本のワインが「プピーユ・1999」でした。
雫はそのボトルを手に静かにグラスを傾けて亡き先輩の姿を心に重ねながら、その味わいに想いを馳せます。
このシーンは非常に印象深く描かれており、ワインが単なる飲み物ではなく、記憶や感情を呼び起こす“心の媒介”として表現されているのが特徴です。
雫はその一杯から先輩の情熱や優しさ、人生の重みを感じ取り、ワインを通して心を通わせるのです。
プチ・シャトーブームと神の雫9巻が重なって話題に
プピーユには、ワイン業界でいまなお語り継がれる伝説があります。
1989年、オーナーであるフィリップ・カリーユが手がけたプピーユが、著名なブラインドテイスティングで、名門「シャトー・ペトリュス」と最後まで首位を争ったのです。
この出来事は大きな反響を呼び、「カスティヨンのシンデレラワイン」としてプピーユの名は一躍知られるようになりました。
また、この一件から「格付けにとらわれず、小規模でも卓越したワインを造る生産者」へ注目が集まり“プチ・シャトー”ブーム火付け役の一つとも言われています。
以降、プピーユをはじめとする小規模シャトーは、「ガレージワイン」や「プチ・シャトー」としてワイン誌や専門店などで取り上げられ、2000年代中盤から後半にかけてブームが加速。
その流れと重なるように、2009年には人気ワイン漫画『神の雫』第9巻でプピーユが登場し、日本国内でも一気に注目度が高まりました。
プチ・シャトーブームと『神の雫』の影響が重なったことで、プピーユは日本のワイン愛好家にも広く知られる存在となったのです。
ちなみに『神の雫』そのものの評判やバージョンによる違いが気になる方はこちらも参考にどうぞ。
原作やドラマ版の違いを比較しています。

【まとめ】プピーユの当たり年で最高のひとときを
これまで紹介してきたように、プピーユは「右岸のガレージワイン」として脚光を浴び、ヴィンテージや醸造スタイル、ラベルの背後にあるストーリーまでも含めて、多くのファンを魅了する存在です。
ここで一度、内容をわかりやすく整理しておきましょう。
【注目ポイントまとめ】
■プピーユの当たり年は2016・2010・2017などが人気
■シャトー・プピーユはセカンド的位置づけで熟成方法も異なる
■プピーユ・アティピックは無添加で造られる特別キュヴェ
■プピーユという名前は「丘のはしっこ」に由来
■自然派ワインとして有機栽培・低SO2で造られている
■ 適温は16~18℃、グラスは中庸なボルドー型がおすすめ
■神の雫9巻では“思い出を紡ぐワイン”として登場
■ペトリュスと競った伝説が「プチ・シャトー」ブームの一つのきっかけに
プピーユは、当たり年の違いによる味わいの幅、ガレージワインとしての希少性、そして『神の雫』での登場による知名度など、様々な魅力を持つ1本です。
ちょっと特別な日や大切な人との時間に、ぜひ選んでみてはいかがでしょうか。
宜しければこちらもご拝読ください。

